歌野の自然とふれあう会
                                                     
 古民家再生
 
 

西山邸について

 西山邸は、四周山の谷あいの、歌野川上流に開かれた歌野地区に位置しています。明治14年農家の母屋として建築され、築124年、延床面積183.6u、扠首構造の屋根と四つ間取り形式の平面型及び大黒柱を中心とした架構形式を残す当地方の典型的な田の字型住宅です。正面に水田、背景に山林が広がり、また付近を豊富な水流を誇る歌野川が流れ、建築当時とほぼ変わらない環境を残しています。

郷土文化保存伝習施設

 昭和52年、県営事業として干害排水と防災を目的とした、歌野ダムの建設が始められました。その際に、4戸の民家はダムの底に沈み、西山邸は空家になりました。昭和60年にはダムの周辺の整備に3億円が投資され、「新農業構造改善事業」を組み入れて「自然活用村」として観光開発が進められました。事業内容のひとつに、「郷土文化保存伝習施設」の整備があり、当時集落に残存していた茅葺き民家で比較的状態が良好であり、農作業用に使用されていた西山邸を展示施設として活用することが決まり、改修が行われることになりました。
 
 しかし、17年が経過した頃は老朽化が進み、来客も途絶えたため、西山邸は所有者に返還されました。この時、西山邸は解体が決まっていました。

茅葺き

 西山邸で3年間に渡り、田植えや稲刈り、餅つきを行っていた人々から、西山邸の保存・継承を望む声があがり、地元の有志と大学によって「歌野の自然とふれあう会」を立ち上げ、住民団体で西山邸を維持・管理していくことが決定し、同年8月、西山邸の土地・建物が所有者に返還されました。

保存に際し、屋根の修繕が第一に必要とされていたため、平成15年5月、痛みの激しい北・西面の葺き替えが行われ、町内80代の茅葺き職人の指導のもと、地元の人々に呼びかけ、約70名の参加が得られました。


まず古い茅を撤去し、骨組みだけの状態にします。


新しい茅を屋根の軒部分から葺きます。


屋根棟部分に向かって葺いていきます。


日が暮れた頃、屋根の葺き替えが無事終わりました。

構造補強と内部改修

 築124年の古い趣きを大切にし、地元の小学生からお年寄りまで幅広い世代の人々が集う場所として改修計画が立てられました。
 まず、柱や梁等の腐食部材の交換と、床下は足固め、壁は耐震パネルによる耐震補強工事が行われました。飲食店として使用するため、土間を厨房として改修し、水道が敷かれていないため、井戸も敷地の西側の続き間座敷は多様に使用できるよう、板の間に張り替えられました。囲炉裏は以前は使用されていらず、畳が被せられていましたが、冬季の寒さが厳しい時期に囲炉裏を囲んで暖を取ろうと、中央部に移動し、復元されました。壁がないため、以前は電気配線が天井から柱に直接設置されていましたが、床下からのフロアコンセントが取り付けられ、配線の露出が避けられました。吹き抜けの土間は、梁にスポットライトが取り付けられ、茅葺きの屋根と木組みの美しさを下から照らされています。外部は屋根棟部分と北面のトタンの張替え、軒の改修が行われました。

改修後平面図

 


改修前(S59)


改修後(S12)


足固め工事


耐震パネル工事


スポットライト